東京の商社で働く樋口浩介は、50歳という年齢を迎えながらも、仕事への情熱を失っていた。日々はただ忙しく過ぎ、中間管理職として上司と部下の板挟みになり、心身ともに疲弊していた。そんなある夜、オフィスで偶然目にした小豆島の旅ガイドが彼の心を揺さぶる。小豆島は浩介が中学時代を過ごした思い出の地であり、懐かしさとともに、何かから逃げるようにして彼は島へ向かう決意を固める。 　旅の途中、浩介は突然現れた不思議な少年に出会う。少年は何も語らないが、なぜか浩介の後をついてくる。少年に導かれるように島を巡り歩くうちに、浩介はかつての友人や恩師との再会を果たす。しかし、それらの出会いは単なる懐かしさだけでなく、記憶の奥底に封印していた苦い思い出をも呼び覚ます。野球部での挫折、初恋の痛み、恩師との確執……。過去の傷が徐々に浮かび上がる中、浩介は少年の正体に疑問を抱き始める。 　物語は意外な結末へと向かう。少年の正体が明らかになるにつれ、浩介は自分自身と向き合い、過去を受け入れることで新たな一歩を踏み出す。この旅は単なる逃避ではなく、彼にとって真の意味での「人生の遠回り」だったのかもしれない。